紙川千亜妃:世界とささやく精霊のあいだで
- Chiaki Kamikawa
- Feb 26
- 3 min read

こんにちは!はじめまして。
私のアーティストとしての歩みを振り返ると、それは常に「世界と世界のあいだ」で続いてきた長い対話のように感じます。目に見えるものと見えないもの、親しみのあるものとどこか不思議なもの、日常と神話的なもの。その境界を行き来しながら、制作を続けてきました。
私は日本に生まれ、現在はキプロスに暮らし、制作を行っています。絵画、ドローイング、彫刻、インスタレーション、版画など、さまざまな表現方法を横断しながら、現実と幻想が織り重なる多層的な世界を探求しています。
日本で育った私は、アニミズム的な感覚に囲まれていました。それは単なる概念ではなく、自然や物、さらには言葉にまでそれぞれの精霊が宿るという、生活に根ざした感覚です。神道や民間信仰に深く結びついたこの世界観は、私のものの見方、そして作品の根底を形づくっています。あらゆる存在に宿る気配や精神への親しみと敬意は、今も変わらず私の中に息づき、制作を支え続けています。

アーティストとしての初期の活動はヨーロッパで始まりました。まずイギリスのエディンバラ・カレッジ・オブ・アートで学び、その後オランダのサンドベルグ・インスティテュートへと進みました。異なる文化や思想に触れる中で、視覚言語は大きく広がりました。同時に、日本から持ってきた物語や精霊、民話や記憶へのつながりも、より強く意識するようになりました。西洋の歴史や風景に囲まれて暮らすことは、アニミズム的な感覚を新たな環境と対話させたいという思いをいっそう深めてくれました。

2007年からはキプロスを拠点としています。この島の光、歴史、荒々しくも美しい風景は、私の制作と切り離せない存在になりました。私は、インスピレーションを与えてくれる場所と誠実に向き合うことを大切にしています。単に舞台として借りるのではなく、そこで暮らし、時間を重ね、その影響を十分に感じてから作品に取り込みたいのです。年月を経るなかで、テーマは日本の記憶に根ざした内省的な物語から、キプロスの文化や日常風景を織り込んだ情景へと広がってきました。それらはすべて、私自身の象徴的な言語を通して表現されています。
私の作品に惹かれる理由のひとつは、おそらく物語性と神秘性の融合にあるのではないかと思います。日常の室内や風景、建築のかたちの中に、人間だけでなく影や精霊、小さな秘密の存在たちがひそんでいます。現実と幻想の境界に立つその緊張感を、私は楽しんでいます。そこには遊び心や内省、時にはユーモアもあります。物陰からのぞくくすくす笑う目、空中に漂う言葉、日常と想像のあいだを揺らぐ不思議なシルエット――私はそうした小さな「仕掛け」をそっと忍ばせます。

浮世絵の優雅さや、マンガや妖怪のサブカルチャー的エネルギーなど、日本の伝統的なモチーフに触れることはありますが、私の作品が目指しているのは単なる引用ではありません。それは、別の見方、別の在り方を提示すること。私たちが暮らす空間を違う角度から見つめ直し、見落としがちな気配を思い出すための提案です。
私が描くひとつひとつの線やかたちが、どこか懐かしくもあり、同時に少しだけ不思議に感じられる世界への入口となれば嬉しく思います。そこでは、精霊たちがそっと気づかれるのを待っているかもしれません。



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